<withコロナで変わったこと②>
長引くコロナ禍の影響から、クリニックを取り巻く経営環境が大きく変化しています。
クリニック経営において、特に大きな影響をもたらしているのは「感染症」に対する社会意識の変化です。
現在、政府が提唱する「新たな生活様式」を守りながら生活することが余儀なくされており、「患者」の受療行動に大きな変化が生まれてきています。
<#1はこちらから>
新型コロナウイルス拡大により緊急事態宣言が再度発出され、
引き続き医療企業は病院やクリニックなどの医療機関へ営業活動がしにくい環境にいます。
医療機関を取り巻く経営環境の変化をテーマに、医療企業が考えなければいけないことを4回に渡ってお送りいたします。
患者アクセスの多様化
新型コロナウイルスの感染拡大による影響からもたらされたのは、病院・クリニックの経営環境の変化は、「オンライン診療・服薬指導」に代表される新しい診療のあり方が作り出す「患者アクセスの多様化」です。
オンライン診療・服薬指導については、新型コロナの影響から、2020年4月に時限的に初診からのオンライン診療が認められました。コロナ禍が続く現在においても、この時限措置は続いています。
今回、暫定的にオンライン診療の利用範囲が拡大されましたが、それを恒常的に認めるかが2022年の診療報酬改定の争点となります。政府の方針としては、かかりつけ医に限り、容認する方向性が打ち出されており、次期改定では大幅な規制緩和がされることが予想されます。
この流れは医療機関、特に「かかりつけ医」機能を担う小規模病院及びクリニックにとって、患者の「利便性」を考えると避けては通れない流れであり、今後オンライン診療を通常の対面診療とどのように組み合わせて新たな価値を創造していくが重要になってきます。「人は易きに流れる」という言葉があるように、一度利便性を理解した患者の要望を応えるためには、必要な変化であると考え、医療機関側は取り組む必要があるのではないでしょうか。
自動化・生産性向上
新型コロナがもたらしたもう一つの変化は、テクノロジーの急速な進歩に伴う「自動化・生産性向上」の取り組みです。
新型コロナがもたらした変化について、マイクロソフトCEOのナデアの「2年の変化が2か月になった」言葉が言い当てています。急激なデジタルシフトが進む現状において、これまで遅々として進まなかった医療のデジタル化が、急激に進むことが予想されます。
デジタル化は「時間・距離・場所」を限りなくゼロに近づける、と言われますが、すべてのものがインターネットにつながり、その利便性を享受する社会では、IT機器をどう診療に、そして病院・クリニック経営に役立てるかを真剣に考える絶好の機会が到来しているといえるでしょう。
例えば、現在話題になっている、
「自動精算機」
「Web問診」
「AI」
「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」
は、人手不足解消に効果的と期待されており、慢性的に人材不足の問題を抱える現場にとっては、積極的に取り入れる医療機関が増えるでしょう。
患者と正しい信頼関係を構築する
長引くコロナ禍で患者の「受診控え」が病院・クリニックにとって深刻な問題となっています。
これほどまでに「患者が来ない」状況は医療機関にとって、過去に経験したことがないのではないでしょうか。
新型コロナウイルスは、病院・クリニックと患者の関係性に大きな警鐘を鳴らしています。従来のように、「立地さえよければ患者は自然にやってくる時代」は終わり、「混んでいる病院・クリニックはさらに人気がでる」という考え方は、コロナ禍で大きく見直しを迫られています。
普通が普通じゃない、ニューノーマルな時代が来ているのです。
感染症対策をしながら経済活動を行う時代は、これまでの常識にとらわれない工夫なり、対策が必要なのです。
その問題解決のヒントが、「エンゲージメント(愛着・思い入れ)」という言葉にあります。
病院・クリニックにおけるエンゲージメントとは、「かかりつけ医制度」の定着に他なりません。政府が期待する、かかりつけ医がゲートキーパーとして専門の医療機関へ振り分ける社会構造を、新型コロナウイルスは後押ししている結果となっているのです。
患者にとってのかかりつけ医とは、どういう役割を担うべきか。
「患者と正しい信頼関係」を築いた病院・クリニックのみが生き残ることが可能になる時代が来ていると考えます。
これらを踏まえて医療企業は、患者に選ばれるクリニックを実現できるようなサービス、製品を医療機関へ提案する必要があるのではないしょうか。
自社のサービス・製品の市場調査、リサーチをご検討中の方はご相談ください。
プロフィール
大西大輔 (おおにし だいすけ)
担当分野
クリニックのICTプロダクトのマーケティング戦略
医療ICTの普及、基盤整備に貢献することで、全国民が、質の高い医療サービスを継続して享受できる社会を実現する。
経歴
過去3000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、医療系の公的団体を中心に講演活動および執筆活動を行っております。また、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティング行っています。
2001年 一橋大学大学院MBAコース修了
2001年 医療系コンサル会社に入社
2002年 医療IT総合展示場「メディプラザ」設立
2007年 東京、大阪、福岡の3拠点を管理する統括マネージャーに就任
2016年 コンサルタントとして独立し、「MICTコンサルティング」を設立
2018年 MICTコンサルティング株式会社を設立(法人化)
2019年 一般社団法人リンクア(医院教育)を設立