【2021年10月最新版】コロナ禍で医療現場で起きていること#2

<長引くコロナ禍の影響②>

感染対策と共にコロナ禍で診療所において著しく進んだのが「デジタルツール」の活用です。
クリニックでは電子カルテ・レセコンといった基幹システムに、デジタルツール組み合わせることが一般的になってきています。

診療所の受付、待合室の現状

診療所の受付は、狭い空間に複数のスタッフがおり、スタッフ同士の距離が近いという問題があります。

また、待合室では、患者の滞在時間が比較的長い傾向にあり、患者の数も多ければ、それだけ密になります。
さらに、患者と医療スタッフは、受付時や会計時にどうしても至近距離で接する必要があります。このようにクリニックの受付や待合室は、3密になりやすい傾向にあるのです。
コロナ禍では早急にこの改善に取り組む必要がありました。

予約システムを導入して「待たせない」取り組み

現在、多くのクリニックで患者同士のソーシャルディスタンスを確保するために、待合室の席数を減らしたり、車の中で待ってもらったりと、工夫をされています。
しかしながら、それにも限界はありますので、根本的な対策が必要なのです。
そこで、「距離」ではなく「時間」に注目した対策として予約システムの導入が進んだのです。

従来、クリニックは患者は「いつでも来る」という運用をしてきました。
診療時間内であれば、何時に来てもいいということになります。このため、朝一番や診察終了間際に患者が集中し、密が発生してしまうのです。
そこで、「決まった時間に来る」というオペレーションに変革することが求められます。患者が決まった時間に来ることで、患者の集中は減り、また待合室で待つ時間も減っていくのです。

時間による距離(タイムディスタンス)をとるためには、「予約システム」の導入が有効です。

予約システムは、「時間による予約」と「順番による予約」、その中間の「時間帯による」の3つのタイプがあります。
待合室が密集する原因は、待合室での待ち時間にあります。
いつ呼ばれるかわからないまま、多くの患者が待っています。そこで、予約システムを導入して、自分の順番や時間、時間帯が来てから来院する仕組みにしてはどうでしょうか。自分の番が近づくまでは、自宅などクリニックの外で待つことが可能です。こうすることで、待合室での滞在時間は劇的に減っていきます。
例えば、自分が20番であればその5番前に来院することで、移動も考慮すると待ち時間がほとんどなく診療を受けることが可能になるのです。これで、時間による距離の確保ができると思われます。

Web問診でトリアージ

また、診察の前には、初診であれば「問診」の記入が求められます。
この問診業務も待合室で行っていては、密の原因になってしまうのです。

そこで、最近増えてきているのが「Web問診」の導入です。
事前にホームページからWebで問診をとることで、来院したときにはそのまま診察に入ることが可能です。先に紹介した予約システムと組み合わせて使うと、待合室での滞在時間がさらに短縮できます。

さらに、コロナ禍で新たに「トリアージ」としての利用が増えています。院内での感染リスクを考えると、新型コロナに感染している可能性のある患者が、待合室に長く滞在するのは、感染リスクを伴います。そこで、事前に問診をとることができれば、クリニックの外で対応することが可能です。

具体的には、感染疑いの患者は、電話やオンラインでまずは症状を確認する、車で診察を行う(ドライブスルー診察)など、事前に問診を行うことはトリアージになるのです。一番最初に出会う受付スタッフと患者の接触を減らすことで、スタッフを守り、クリニックを守ることにつながります。

オンライン診療の活用

コロナ禍において、新たな診療スタイルとして「オンライン診療」が注目されています。

昨年4月から初診から利用することが可能となり、様々な条件も時限的に緩和されました。
この流れはさらに進み、次期改定では恒常的に認める方針が伝えられています。電話やオンライン診療は、来院せずとも診療ができ、患者の「利便性」の向上を図ることが可能となります。

オンライン診療システムの導入成功のカギは、いかに多くの患者に利用してもらうかです。
多くの患者に使ってもらわなければ、せっかくお金をかけて導入したものがムダになってしまいます。オンライン診療は、しっかりと患者に告知をしなければ利用は進みません。
ホームページやSNSを利用して患者に情報を届けるとともに、来院時にもパンフレットなどを利用して説明を行ってください。
また、オンライン診療をスムーズに患者に利用してもらうためには、ITによるハードルを下げる工夫が必要です。
患者が利用する際に必要な事前準備を説明するとともに、来院時にお手伝いをするなど、できるだけハードルを下げる必要があるのです。

コロナ禍では、オンラインと外来の特徴をしっかり把握して、上手に使い分けることが大切です。
オンラインが得意なのは、患者からの事前相談や、コロナ禍での継続的な治療です。

一方で、検査や処置、手術はできませんので、オンラインはあくまで外来の補完に過ぎません。
コロナのせいで患者との関係が薄まらないように、患者のハートをつなぎとめるツールと考えれば良いのではないでしょうか。
オンライン診療は外来受診の必要性を説き、外来受診へ誘導するツールと考えることも大切です。


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プロフィール

コンサルタント紹介 大西大輔
大西大輔 (おおにし だいすけ)
担当分野
クリニックのICTプロダクトのマーケティング戦略

医療ICTの普及、基盤整備に貢献することで、全国民が、質の高い医療サービスを継続して享受できる社会を実現する。

経歴
過去3000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、医療系の公的団体を中心に講演活動および執筆活動を行っております。また、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティング行っています。

2001年 一橋大学大学院MBAコース修了
2001年 医療系コンサル会社に入社
2002年 医療IT総合展示場「メディプラザ」設立
2007年 東京、大阪、福岡の3拠点を管理する統括マネージャーに就任
2016年 コンサルタントとして独立し、「MICTコンサルティング」を設立
2018年 MICTコンサルティング株式会社を設立(法人化)
2019年 一般社団法人リンクア(医院教育)を設立